TOSHIYANの山物語

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■ 宮之浦岳   1,936m      単独                       

     コース/  5月17日 鹿児島港(フェリー)〜宮之浦港(路線バス)紀元杉〜淀川登山口
                〜 淀川小屋
          5月18日 淀川小屋〜花之江河〜栗生岳〜宮之浦岳〜淀川小屋
          5月19日 淀川小屋〜淀川登山口〜紀元杉〜ヤクスギランド(救助隊のサポート)
          5月20日 予備日(開聞岳)
            

■ 年が明けて、残り45座となっている百名山達成を今後の己の目標とすることに決めた。輝かしい令和元年、
手始めに百名山最南端、九州屋久島宮之浦岳から攻め上ることにした。
  当初、宮之浦岳登山について次のとおり計画した。
  初日は淀川登山口から入山。淀川小屋に宿泊。
  2日目は、淀川小屋から宮之浦岳を踏破、高塚小屋に下り宿泊。
  3日目は、高塚小屋を早立ち、縄文杉等を経て白谷雲水狭に下るという2泊3日のルート。
  だが、悪天候のため大きく計画変更を余儀なくされた。

2019年5月17日/曇りのち雨
  前日福岡からの高速夜行バスにて早朝6:17鹿児島港に到着。
  2時間ほど食事休憩して、8:30発折田汽船「フェリー屋久島2」にて宮之浦港を目指す。
  天候はあまり良くない。フェリーも引き返すことがあり得るとの条件付きの出航である。
  天気予報では明日から二三日は雨との予報。
  もとより、終日雨に降られることは覚悟の上の山行だ。
   
    

  多少の遅れで宮之浦港に着き、路線バスを乗継ぎ終点の紀元杉バス停に向かうも、ここまでは順調に来た。
  バス停を少し戻ると、紀元杉が聳え立つ。圧倒的な威容に息をのむ。
  紀元杉から淀川登山口まで車道歩き。すでに雨模様。登山道に入るころにはかなりの大降りとなった。
  淀川登山口からいよいよ本格的な登山道となる。登山道は雨に濡れ、大きな石や木枝木株を跨いだり木道の
 階段有りとすこぶる歩きにくい。
  それでもバス停から淀川小屋まで1時間30分、16:15到着。
 
    

  小屋には10人ほどの先客。入口近くの隅っこに寝場所を確保しホッと一息つく。
  この日宮之浦岳から下ってきたという隣の客人としばし話し込み、明日の雨が余程強ければ登頂は断念かと
 半ば覚悟する。
  これからの登山日程にあれこれと思いをいたす。計画していた白谷雲水狭へのルートは諦めるも、せめて
 頂上へのピストンだけでも敢行したいものだ。
  疲れているはずなのに妙に頭がさえてなかなか寝付かれず。濡れた下着を取替えようやくウトウトする。

  なお、登山口から小屋のあたりは雨のため防水機能のないデジカメを取り出すことを躊躇い画像がないのが
 残念!

  (コースタイム) 宮之浦港(バス) 0:30 合庁前(バス) 1:07 紀元杉 0:35 淀川登山口 0:45 
            淀川小屋

2019年5月18日/大雨
  雨は依然降り続いており、朝になっても未だ気持ちは揺れ動いていた。5時起床。
  だが次第に登頂への意欲が膨らんできた。荷物を軽量化し頂上のピストン。6:08意を決して出発する。
  登山道は水浸しの状態。木道上も滝のように水が走っている。
  周囲の展望は全くなし。途中、折角の展望箇所でも何も見えず。
  時々雨を気にしながらもデジカメを出してシャッターを切る。
  
  7:43雨の花乃江河を通過する。晴れていれば一面の高層湿原、シャクナゲなどの花々、美しい光景が一杯
 に広がっていることだろう。
  登山道は、所どころに急な階段、縄梯子が現れる。雨に濡れていても花崗岩の岩肌は滑りにくいので助かる。
 でも慎重を期して歩みを進めていく。

  しばらく行くと、標高1867mのくりお(栗生)岳。ほこらの標識も現れる。上に見えるのは頂上の奇岩か。
  視界はほとんどないのでそのまま通過する。
  頂上はもう少しだ。このあたりから最後の急登が始まる。
  
  10:05 独り宮之浦岳のピークに立つ。風雨が強い。展望も全くなし。
  ピークの標識をデジカメに収め早々に下山する。

       

       

         
                      動画でピークを実感してください。

  10:25ピーク発。途中栗生岳のほこらにてしばし雨宿りを兼ねて休憩をとる。益々激しくなる雨の中、一目散
 に小屋へと下る。登山道は至るところに水が溢れ、所どころ滝も現れ大きな川となって流れている。
  小屋の手前の沢では腰まで水に浸かってしまった。
  14:00淀川小屋に戻る。小屋には誰もいない。全身ずぶ濡れ。結局夕刻までに他の3人が戻ってきた。
  以降、この4人が山を下りるまで行動を共にすることになった。
  イヤな予感が頭をよぎる。登山口まで山道の状況は?バス停に果たして下からバスは来ているのか?

   (コースタイム) 淀川小屋 1:14 小花之江河 0:23 花之枝河 2:20 宮之浦岳 0:25 栗生岳祠
             2:50 淀川小屋

2019年5月19日/雨
  5時起床。携帯が通じないので下界の状況など情報が全くない。登山口まで下るとスマホが通じるか連絡
 可能となることを祈るしかない。バスが運行いていなければタクシーを呼ぼうなどと希望的な観測。
  8:30小屋を出発。9:10登山口まで下るも下界との連絡は不可。歩くしかない。バス停を過ぎ所どころに山崩れ
 の詰め跡が現れるに及んで、もはや車両通行は絶望的であることを悟る。
  2時間ほどアップダウンの舗装道を歩いて行くと、ようやくヤクスギランドの施設が見えてきた。大勢の人もそこ
 に留まっているいるようだ。
  その中のひとりから、淀川小屋にいた人数等事情を聴かれたり、この先は通行不可で救助隊による救助を
 待つしかないと告げられるに至って、これは只事ではないと腹を括った。

  その後、ヤクスギランドの先まで歩いて行くと、大規模な土砂崩れ箇所が・・・。幅およそ30mに渉り道路が
 決壊。完全に通行不能である。
  そしてここを渡るために救助を待つことになった。我々はその最前列にいたが、後を見ると荒川方面からの
 登山者などが次から次と集まり滞留している。その数は二百数十人にも・・・。
  
  警察や自衛隊員による土砂崩れ箇所を渡すための懸命の応急措置(沢を跨ぐ足場とロープ敷設)の結果、
 2時間半程してようやく救助隊員のサポートによって一人づつ対岸に渡ることができた。
  救助活動にあたっていただいた警察、自衛隊員等には感謝の言葉もない。

  救助後は全員が大型バスで安房の役場庁舎まで送って頂き、健康状態のチェック等を受けた。
  そしてその先、ご親切にも宿泊予定の宮之浦地区まで送り届けていただいた。

  さすがに4人とも疲労困憊。だが、その夜は近くの居酒屋で無事生還への祝杯を挙げたことは言うまでもない。
  なお、その日のニュースで「50年に一度の記録的な大雨」(気象庁)だったと聞いて、そのような大災害に遭遇
 した偶然の巡合わせと無事の下山に感慨もひとしお。

   (コースタイム)  淀川小屋 0:40 淀川登山口 約2:00 ヤクスギランド休憩施設
    
2019年5月20日/曇り
  翌20日、13:30発のフェリーで鹿児島に帰還。
  屋久島で予備日を消化したため、この日に登る予定の開聞岳は断念することとなった。