山の本棚
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 山に関する私のお薦め本のページです。


 02.09.01  戦後山岳文学の名作

   【 北八ッ彷徨 】          山口耀久著     平凡社    2,800円

   【 八ヶ岳挽歌 】          山口耀久著     平凡社    3,000円


    『北八ッ彷徨』は1960年に初版本が出たが、しばらく絶版になっていたもので、昨年(2001年)、
   その続編ともいうべき『八ヶ岳挽歌』と合わせて出版された。

    どちらも、その名のとおり八ヶ岳、主として1950年代から60年頃の北八ヶ岳を題材としたエッセイ集。
   瑞々しい感性と豊かな表現力で北八ツの四季折々の自然があますところなく紹介されている。
    たとえば、こんな一節にも著者の北八ツへの深い愛情が現れている。
     「鬱蒼とした針葉樹の原生林がいちめんに、なだらかな山々の起伏を被い、山奥の澄んだ湖がひっそ
    りと森のしじまを映している。この裏八ヶ岳ともいうべき影の濃い山域には、八ヶ岳の本峰である南八ヶ
   岳の、 あの気負い立ったような激しさと鋭さはないが、そのかわり、いつまでも人の胸に残るような、奥
   深い静けさに充ちたやすらぎがある。」(北八ッ彷徨)    

   一方、その後に続く道路開削などの容赦ない開発と失われていく自然への強いいきどおりも忘れてい
   ない。『八ヶ岳挽歌』のほうは、そうした失われてしまった自然への鎮魂歌とも読みとれる。
    この本が、「戦後の山岳文学の最高傑作」といわれているのも、十分納得できる。
                  
       


     
 02.05.12  雪の日高で起きた悲劇の雪崩遭難

   【  日高 】             立松和平著     新潮社    1,500円   

                                                                                       
   1965年3月、日高山脈札内川10ノ沢で大規模な雪崩遭難事故が起きた。    
   6人全員が犠牲になった北大山岳部の沢田パーティーの遭難だ。リーダーだけ
   がデブリの中で意識を回復し、4日間力尽きるまで脱出を試みたことが、彼の残
   した遺書によってわかっている。
   
    本書はその事故をモチーフにした山岳小説である。深いデブリの中、死に直面
   し何を考え、どう行動したのか。雪の日高山脈の描写も精緻で興味深い。
    
    蛇足であるが、この事故を教訓に積雪期の日高では標高700mまでに沢から
   尾根に取り付くようになったという。      


02.01.06 今、丹沢がおもしろい!
 
  【  南の海からきた丹沢       神奈川県立博物館編   有隣新書    951円

 
  ヒマラヤ山脈はその昔、インド半島が大陸にぶつかって隆起したことはよく知られ  

  ている。 (あのイエローバンドの化石はあまりも有名だ。)
  
   同じことが丹沢でも起こっていた。今から600万年前、フィリッピン海プレートに乗
   って北上してきた丹沢が日本列島に衝突、その後伊豆半島が衝突し現在のように
  丹沢山地を隆起させたという。
  
    本書は、丹沢山地の生い立ちをプレートテクトニクス理論によって、わかりやすく
  解説している。そういえば、「山の自然学」(小泉武栄著)によれば、丹沢にあれだけ
  ブナ林がまとまって植生しているのは太平洋側の山地では珍しいという。
   
   いずれにしても、丹沢はロマンに満ちた、ワクワクさせてくれる山であることは間違
   いない。


  01.11.03 これまで人々は山にどう関わってきたのか?そしてこれから・・・・。

  【  山の社会学 】              菊池俊朗著      文春新書    710円

    
  戦後日本の山や登山はどのように変容を遂げてきたのか。信濃毎日新聞に籍を
  置く著者が40有余年に渉る山との関わりを通して、山小屋経営や百名山登山ブー


  ムを巡る問題、山の環境保全など様々な切り口から「進歩とひずみ」を具体的に検
  証。知られざる登山の舞台裏もいろいろ紹介されていて興味深 い。 我々はこれか
  ら、登山や山にどう向き合うべきかを考える上でとても参考になる。                        
                             
  
   特に、登山道の整備や管理のあり方について、 美唄山における自らの経験と照
   らし合わせて、「問題は、今ある登山道をどう維持するかである」という著者の問題
   提起に共感。



  01.2.22   山のトイレ問題を考える。

  【  山でウンコをする方法  自然と上手につきあうために 】  キャサリン・メイヤー著
                                            日本テレビ放送網(株) 1,456円


  山のトイレ問題を考える上で格好の参考書。豊富な自然体験をもとにしたウンコ処理の
実践的なテクニ

 ック集でもある。

   排泄に伴う環境への影響や世界的な広がりをみせているジアルディア(寄生虫の
  一種)による感染の問題、 女性が「威厳を損なうことなく用を足す」(筆者は女性)た
  めにどうしたらよいかなど、シリアスなテーマについてユーモラスな語り口で伝えて
  いる。
  
   ウンコも積もれば山となり、自然環境に大きなダメージを及ぼすことをしっかり肝に
  銘じ、まさに「肛門を引き締めて」(訳者)山に登らなければと思う。

 



01.2. 6     山の環境問題

  【 日本の山を殺すな! 】           石川徹也 著           宝島社新書   660円


   山岳登攀の記録やコース紹介などの本は数多く出版されているが、山の環境問題を
真正面から取り上

  げた本は意外に少ない。
     本書はそうした山の環境問題の理解に役立つ貴重な一冊だ。
 
     全国の主要な山岳地で何が起きているか、丹念な現地取材をベースに鋭く問題提起
 している。
   大雪山 など優れた山岳資源を保全し、世界遺産への登録を目指すとき、山のトイ レ
問題など、解決しなければならない問題があまりにも多いことに気がつく。


   00.12.31    ミニャ・コンガ(7,556m) での悲劇の記録

  【 生と死のミニャ・コンガ】       阿部幹雄 著           山と渓谷社   1,700円

  【 ミニヤコンカ奇跡の生還】       松田宏也 著           山と渓谷社   1,600円

   
    ミニャ・コンガは、 これまでに日本人14人を含む20人の命を呑み込んだ (登頂はたった7隊21人)。
    そんな歴史から、  ミニャ ・ コンガは魔性の棲む山といわれる。         
    1981年に北海道山岳連盟隊が日本隊と して初めて登頂に挑み、 頂上直下で
  起きた8名もの滑落死。登山隊のひとりであり、 かろうじて死をまぬがれた著者の
  生と死の物語である。
     
    悲劇の後も十数年にわたり、 仲間の遺体収容や遺族と の交流に真摯に向き合
  う姿には、「人としての誠実さと責任感 」 とはこういうことかと、 胸打たれる思いが
  する。
   まさに魂が揺さぶられるような一冊だ。    【 生と死のミニャ・コンガ 】

     もう一冊は、 同じミニャ ・ コンガで翌年の 82 年に起きた市川山岳会登山隊の
 遭難の悲劇。 著者は、パートナーと共に頂上直下で悪天候に阻まれ下山を決意す
               るも、 ビバークを重ねるなか、 凍死したものと仲間から退路
  を断たれ、見捨てられたも同然の仕打ち に遭い、 パートナー
  は力尽き、 著者は19日後 に ひとり奇跡的に生還するという壮絶な苦闘の記録
 である。 
 
   最後はイグアナのように這いずって・・・ 想像を絶する過酷さに言葉を失ってしま
  う。両足首、 両手指を完全に失った今もなお、登りつづけているという。 
   【 ミニヤコンカ奇跡の生還 】



  00.12.18  エヴェレスト(8,848m) をテーマにしたノンフィクションなど、5冊を紹介します。

  【 空へ エヴェレストの悲劇はなぜ起こったか 】 ジョン・クラカワー 著      文藝春秋  1,762円

  【 デス・ゾーン 8848M 】              アナトリ・ブクレーエフ他 著  角川書店  1,800円


   この二冊は、いずれも1996年5月、 エヴェレスト南東稜で実際に起こった未曾
  有の大量遭難事故のドキ ュメントだが、事故に遭遇した当事者あるいは関係者で
   ある二人の著者が全く異なる対立した見方で事故を分析している。
     果たしてどちらが真実なのか。 読み比べる価値あり。
  
       私にとっては、はるかに想像を超える世界であるが、今日、エヴェレストには、に
   わか仕立ての観光登山者がビジネスガイド達 (商業隊と称して) によって大量に
   送り込まれていると聞くにつけ、 こうした商業登山のあり方やゴミ・環境問題につ
   いても考えさせられる。



  【 そして謎は残った  伝説の登山家マロリー発見記 】 ヘムレブ・ヨッヘン他著文芸春秋 1,762円

  【 マロリーは二度死んだ 】               ラインホルト・メスナー 著  山と渓谷社  1,600円 


     1999年5月、 75年の歳月を隔てて伝説の登山家、マロリーの遺体がエヴェ
   レスト北東稜で、アメリカの調査遠征隊によって発見された。 20世紀最大の謎
   の一つとされる「果たしてマロリーはエヴェレストの頂上に立ったのか」の真相に
   迫るのが本書である。
    エヴェレスト直下に横たわるマロリーの遺体と所持品からどんなメッセージが
   読みとれるのか。決め手になると思われたコダックのカメラはついに発見されな
   かった。                  【 そして謎は残った 】

                                                                 
                       
 
   そして、メスナーは鋭い洞察と分析でマロリーは頂上には到達していないと結論
  づける。
  「二度目の死(遺体の発見)によっても彼はまだ本当には死んでいない。 ただ消
 え去っただけであり、誰の心の中にもこれまでとは別の貌で生きつづける。」 メス
 ナーの言葉が印象的だ。                                  【 マロリーは二度死んだ 】



  【 神々の山稜 】 上下巻         夢枕 獏 著     集英社    各1,800円

   
    こちらは、 マロリー登頂の謎の核心である 「コダックのカメラ」 を巡って、エヴェ
  レストのミステリーが展開される。 エヴェレストに憑かれ魅せられた男達の壮大な
  ロマン。
    付言すると、 物語では北東稜の岩棚でマロリーが発見される。
    あの獏さんをして、「もう、山の話は二度と書けないだろう。どうだ、まいったか。」
  と言わしめた珠玉の一冊である。